2024年提出分の確定申告【基礎編】-所得税と住民税の課税方式の統一-

確定申告

2022年施行の税制改正により、2024年提出分の確定申告から所得税と住民税とで異なる課税方式を選択することができなくなりました。

それにより、配当所得を特定口座(源泉徴収あり、以下省略)から出して確定申告をし、配当控除や損益通算、外国税額控除を利用するためには所得税だけでなく住民税も申告する必要が出てきました。

そこで、配当所得や譲渡所得を特定口座から出して所得税と住民税を確定申告することによるそれぞれの影響を基本からまとめてみたいと思います。

配当所得と譲渡所得を特定口座から外に出して確定申告をすると、属性によっては逆に損をしてしまう場合もあることから、自身が得をするという確信が持てない限りは特定口座から出さずに申告分離課税の申告不要制度を利用して源泉徴収のまま処理すべきです。

税法上の配当所得の扱い

所得税法において、下表の通り、所得は10種類に分類されています。

出典:国税庁HP

課税方式は、所得ごとに総合課税と分離課税に分かれています。

さらに、分離課税は源泉分離課税と申告分離課税の2種類に分かれています。。

配当所得を特定口座から出さずに確定申告をしない場合、配当所得は源泉徴収されることになり、自動的に所得税15.315%+住民税5%=20.315%の税金が差し引かれます。

しかし、配当所得を特定口座から出して確定申告をすることで、総合課税を選択して配当控除を受けるか、申告分離課税を選択して損益通算を利用するかを選択できるようになります。

つまり、配当所得については、以下の選択肢があります。

上記の3つのパターンの計算をして、最も得をする方法を選ぶことができます。

税制改正の変遷

配当所得を特定口座から出して確定申告をし、総合課税を選択して配当控除を受ける場合の変遷は下記となります。

~2016年

2017年以前は、配当所得を確定申告する場合、所得税と住民税は同一の課税方式でした。

2017年〜2021年

2017年施行の税制改正により、2018年提出分の確定申告から所得税と住民税とで異なる課税方式が選択できるようになりました。

そのことから、配当金を受け取った人は所得税を総合課税で申告して配当控除を利用し、住民税では申告不要制度を選択することで、源泉徴収の税率よりも下げて還付金を受け取ることが可能になりました。

ただし、所得税は国税、住民税は地方税であり、管轄が異なることから、確定申告書を税務署に提出するのとは別に住民税申告書を役所に提出する必要がありました。

2022年〜2023年

2021年施行の税制改正により、2022年提出分の確定申告から確定申告書の様式が変更され、住民税のすべての課税方式で申告不要を選択できる欄が新設されました。

それにより、確定申告書を提出するだけで手続きが完結できるようになりました。

これは、税務署から役所に情報が共有されることにより、住民税の申告手続きも完結されるようになったことを意味します。

ただし、住民税のすべてではなく一部だけ申告不要とする場合や、申告分離課税で申告する場合は、従来通り別途住民税申告書を役所に提出する必要がありました。

2024年〜

2023年の税制改正により、2024年提出分の確定申告から所得税と住民税の課税方式を統一しなければならなくなり、別々の課税方式を選択することができなくなってしまいました。

まとめ

税制改正後の配当所得に係る最終税率

下表は、税制改正前と後の配当控除適用後の配当所得に係る最終税率一覧となります。

税制改正前

税制改正前は、給与所得や配当所得などを合計した所得金額から所得控除を差し引いた課税所得金額が900万円以下であれば特定口座から出して総合課税で確定申告した方が税率は低くなって得でした。

税制改正後

税制改正後である2023年提出分の確定申告では、得になる基準額が695万円以下に下がります。

つまり、総合課税の計算の際に用いる課税所得金額が695万円以下になる場合、配当所得を特定口座から出して確定申告をし、総合課税を選択して配当控除を受けることで得になる可能性があることを意味します。

まとめ

税制改正による配当所得の扱いについての概要部分をまとめてみました。

次回は、この先の本当に得をするかどうかの判断に必要な詳細部分に触れたいと思います。

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